■世界の文字を読んでみよう1

タイヤのみぞが読めた?(アラビア文字を読もう1)

管理人がアラビア文字にきょうみをもったきっかけがこの新聞記事です。三菱(みつびし)パジェロのタイヤの溝(みぞ)のデザインが、アラビア文字の「アラー」(イスラム教の神)と読めてしまったために、 アラブの人々から反発をかったという出来事です。三菱の人がアラビア文字で遊んだことがあっらこんなこたとにはならなかったかも? →アラビア文字の五十音図

2種類の書体での「アラー」※写真は別のタイヤ

横浜ゴムのタイヤ“サウジの受難(じゅなん)

(みぞ)模様(もよう)が「アラー」の文字と似る 謝罪(しゃざい

92.07.24 東京読売朝刊31頁 社会面 写有(全1280字)

反発買い回収・交換

横浜ゴム(本社・東京都港区)が三菱自動車製のジープ型車両用に輸出したタイヤの溝の模様が、イスラム教の全知全能の神「アラー」のアラビア文字表記に似ているとして、サウジアラビア、ブルネイなどイスラム諸国で反発を買い、横浜ゴムが同型タイヤの回収・無償交換と生産中止を余儀なくされていたことが、二十三日明らかになった。わが国の経済・社会活動が世界のあらゆる舞台で展開されるようになったいま、各地の宗教や民族感情への細かな配慮の大切さがあらためて問われたケースといえそうだ。

「溝はコンピューターがデザイン」

同社の説明によると、問題が表面化したのは昨年十二月ごろ。信者からの「アラーを侮辱している」との苦情がきっかけで、今年一月には、イスラム教徒の実力者が回収命令を出した。

この溝の模様は「運転安全性を重視してコンピューターがデザインしたもの」で、同社では、思わぬ結果に当惑。結局、イスラム側の代表者と協議の結果、「イスラム教に対する知識不足」を認め、さる五月十三日付で、日本イスラム協会の出している雑誌に謝罪広告を掲載。〈1〉イスラム教に対する知識不足について遺憾の意を表明する〈2〉このタイヤの生産は即刻中止した〈3〉イスラム側代表者との協議で悪意のなかったことが確認された――との趣旨の三項目の内容で、これとともに同社では、イスラム諸国に輸出・販売済みの同型タイヤの回収、交換に乗り出した、という。

横浜ゴム側は問題とされたタイヤの総出荷本数を明らかにしていないが、ブルネイの場合、同国の自動車販売業者によると、輸入した三百本がすでに回収されたほか、来月到着予定の三百八十本の注文もキャンセルになる見込みだ。

同型のタイヤは、サウジやブルネイのほかのイスラム諸国やわが国の一部で販売された三菱自動車の「パジェロ」に装着されており、横浜ゴムでは、すべてを対象に順次交換に応じていく方針。

同社では「宗教については基本的に侵してはならない問題があり、経済的な負担は度外視して対応していく」と話している。

イスラム教徒のアラーの神に対する信仰は極めて厳格で、外国人が知識不足から思わぬ怒りを招くことがある。昨年九月には英国のダイアナ妃がパキスタンのモスク(イスラム教寺院)を訪れた際、スカートからひざが出ていたとの理由で、案内の僧りょが告訴される騒ぎに発展している。

国際化を考える教訓

文化摩擦の問題に詳しい小林善彦・学習院大教授の話「わが国全体にいえることだが、アラブ諸国に対する視野の狭さと研究の立ち後れが露呈したケースといえる。日本は世界のトップクラスに立ったいま、欧米だけでなくあらゆる地域に気を配る必要があり、真の国際化を考える意味で、いい教訓になったと思う」

毅然たる態度も必要

入江隆則・明治大教授(比較文化など)の話「われわれが世界の宗教事情や民族感情に無神経過ぎることが原因だったようで、横浜ゴムの対応は正しかったと思う。ただ、偶然の一致であり、先方の主張がいわれのない中傷やいいがかりだった場合には、毅然(きぜん)たる態度をとった方が良い」