600-A2形電話機
回転ダイヤル式電話機は、回転式円盤(ダイヤル)を指で回してダイヤルパルスを送出し、自動電話交換機に電話番号を伝える仕組みの電話機です。0~9の数字の穴に指を入れてダイヤルを指止めまで回して離すと、ダイヤルが元にもどる時に数字に応じたパルスが送出されます。
この電話機もハンドル式と同じように2台の間に電源をはさんでつなげれば通話はできますが、相手を呼び出すベルを鳴らすことができません。ベルを鳴らすには75V、16Hzの交流信号を電話機の間に流す必要があります。ちなみにハンドル式の電話機のハンドルを回すとこの交流電流が発生するので、片一方にハンドル式電話機をつなぐとダイヤル式電話機のベルを鳴らすことができます。
ダイヤル式電話機同士をつないで電話ごっこをするには、何らかの交換機の働きをする仕組みが必要です。
緑の黒電話600-A2形
600形電話機は、1963年(昭和38年)日本電信電話公社によって制式化され、提供が開始されました。いわゆる黒電話として多くの人がイメージするるのは、この電話機でしょう。その後登場した外観がほぼ同じ改良版の601形を含めて、電電公社・NTTのアナログ電話機としての最終形で、現在でもアナログ回線に接続すれば使用することができます。電話線を通して局から供給される電流だけで動作するため別途電源を必要とせず、電話線と電話局が機能していれば家庭が停電していても使用できます。そのため近年、大規模停電が発生した災害時に活躍しました。
600形には、ダイヤルパルスが10p/sのA1形(ダイヤルの戻りが遅い)と20p/sのA2形(ダイヤルの戻りが速い)の2種があります。当サイトでのADSLターミナルアダプタを使った実験では、A2形の方が動作が確実なようです。
すでにNTTによる販売、レンタルは終了していますが、まだ現役で使用可能な電話機のため、中古機が大量に存在し、比較的安価に入手できます(写真の電話機はヤフオクで2台1000円程度でした)。ちなみに似た形ですが、より古風で趣のある4号電話機(昭和前期を描いたドラマや映画などで見かけます)などは、けっこう高価です。
600-A2形電話機を3台で内線電話
3台のダイヤル式電話機をつないで内線電話にします。
この電話機は、ハンドル式の電話機と違い、通話用の線とベル用の線が共用のため2本のコードだけで接続できますが、オンフックとオフフック(受話器を置いた状態と取った状態)を感知して、ベル鳴動時(交流数十ボルト)と通話時(直流3ボルト)を切り替えたり、ベルを鳴らすための交流を発生させたりする仕組みが必要です。
2台をつないでインターホンのように使うなら、簡易疑似電話交換機キット(ベルは自動鳴動、ダイヤル操作は無効)などもありますが、結構高価な上に電話ごっこで是非とも体験したいダイヤルを回す操作ができません。いつの間にか、ダイヤルを回して電話をかけた経験のない人が多くなっていることに驚きます。
そこで、何かよい方法はないかと思い探してみたところ、ISDNターミナルアダプタを使う方法がありました。ただし、ダイヤル式電話機がつながるアナログポートを3つ以上備えた機種(電話番号をダイヤル操作するには最低3台の電話がないと意味がない)となるとかなり限られます(さすがにもうアナログ電話をつなぐという需要がないのでしょう)。さらに「#」で始めたりする内線呼び出しをダイヤル操作だけでできる機種となると一層限られると思われます。
ALEXON TD680
アナログポートTEL1~TEL3
ダイヤル式電話を3台使った「電話ごっこ」に必要な上記の条件を満たすISDNターミナルアダプタの一つが、ALEXON社製のTD680という機種です。確認はできていませんがNTT社製にも同様の機能を備えた機種があるようです。
ALEXON社は、現在もダイヤル式アナログ電話をサポートした機種を販売する貴重な会社です。TD680は定価で約50,000円となかなか高価ですが、うまく中古機を探すと比較的安価に手に入れることもできます(写真のものはヤフオクで5,000円ほどで入手しました)。
ターミナルアダプタに電話機をつなぐのにモジュラーケーブルを使用するので、電話機にモジュラーローゼットをつなぎます。ダイヤル式電話機の電話線は白赤2色のコードだけなので、これをローゼットのL1、L2に接続します。ローゼット、モジュラーケーブルは6極2芯のものを使用します(もちろん大は小を兼ねるのでハンドル式電話機で使った6極4芯のものでもかまいません)。
プッシュ方式の電話機をつないでも設定できますが、USBケーブルでPCに接続し専用のユティリティソフトを使う方法が便利です(ALEXONのサイトからダウンロードできます)。初期設定では内線通話が禁止されているので、内線通話を許可します。また、TELポートの初期設定がPB方式(プッシュホン)になっているので、DP(ダイヤルパルス)方式に変更します。
TD680での内線発信はTEL1が#1、TEL2が#2、TEL3が#3ですが、#などの記号がないダイヤル式電話の場合は、#の代わりに22をダイヤルしても使えます。#1、#2、#3がそれぞれ221、222、223とダイヤルすることで呼び出せるので、ダイヤル発信を体験するのにぴったりです。