トップ>とんがり星の活用実践紹介

1.はじめに

4年生の星,星座の学習では,星や星座を探す手段として多くの場合,星座早見盤が利用される。実際の星空の観察は,家庭学習など授業以外の場で行うことが多いことから,子どもたちが自力で見たい星や星座を見つけたり,星や星座の名前を調べたりできる道具は重要である。近年は空にかざしてリアルタイムで星座を調べられるスマートフォンなどの便利な手段も登場しているが,誰もが手軽に利用できる道具として星座早見盤は大変すぐれたものである。科学を感じさせる道具として独特の魅力もある。

しかしながら,星座早見盤は,単純な道具でありながら使い方の難しい道具でもある。大人でも使い方がよくわからないという声を聞くことがある。星座早見盤は,球面である星野を円盤に投影しているため,実際の星空と対応させるには少々の慣れが必要になる。

東西南北各方位の間が等間隔でなく,特に南の空での星のならびのゆがみが大きくなってしまうといった欠点から,星座早見盤の表示から実際の星空をイメージすることが難しい。場合によっては,星座早見盤を逆さまに持って空にかざす場面も生じ(実際は星座早見盤には上下はないが),そのことへの抵抗感を感じる子どもたちもいる。

2.星座早見笠の提案

特に初めて星空を学習する4年生の子どもたちにとっては,プラネタリウムのように実際の星空に近いイメージで立体的に星空を表示でき,しかも星座早見盤のように誰もが手軽に持ち運んで使うことができる道具が望まれる。

そこで,なるべく天球(半球形)に近いイメージが得られ,子どもたちでも簡単に製作ができる形として,すげ笠形(平たい円錐形)の星座早見を提案するのが,星座早見笠「とんがり星(ぼーし)」と名付けた教具である。これならば,方位による歪みの差はなく,星座の形の歪みも少ない。笠型であることで,自然と頭上にかざすことができ,だれでも簡単に実際の星空との対応がつけられる。

ただし,この星座早見笠「とんがり星」には,大きな欠点がある。それは,星座早見盤の最大の利点である一年中いつの時刻の星空でも,月日と時刻の目盛を合わせるだけですぐに調べることができるという機能がないことである。ある特定の日時の星空しか表現できない。

この欠点をカバーするためには,観測日時に応じた「星座早見笠」を多数用意しておけばよいが,1年中を網羅する枚数を用意しておくことはあまり現実的ではない。そこで,観察日時を入力して自動的に星座早見笠を印刷するソフトウエアを作り,授業等の予定に合わせて必要な日時の星座早見笠を作れるようにした。

これを使って,例えば家庭学習で星空観察をさせたい日に,その日の8時,9時,10時の3枚程度の星座早見笠を印刷して持ち帰らせればよい。

円形に切り抜いて切込みを入れる

切込みを重ねてクリップなどで留める

3.星座早見笠印刷ソフト「とんがり星(ぼーし)」

このソフトを使うことで,いつでも観察したい日時の星空を再現する星座早見笠を作成することができるが,さらに子どもたちの星空観察に適した道具とするための機能をもたせた。

(1)観察地の緯度経度に応じた星座早見笠を作成できる

一般的な星座早見盤は,東経135度,北緯35度付近を基準に作成されているものと思われる。東京,大阪程度の違いであれば,観察地の違いによる星の見える時刻や高度の違いは,あまり気にならないと思われるが,北海道や沖縄など緯度,経度の差が大きい地域では,考慮する必要が生じる。例えば,北海道では地平線の下になって見えない南天の星座が沖縄では水平線近くに見ることができるといったことが起こる。「とんがり星」は全国の市町村の緯度経度データを内蔵しているため,市町村名を選択するだけで観察場所に応じた星座早見笠を作成できる。

(2)4大惑星や月を表示できる

一般的な星座早見盤では,惑星や月を表示することができない。木星や金星といった惑星は小学校の学習内容を超えるが,これらの惑星は薄暮の中に一番星として目立つため,子どもたちにとっても気になる存在となる。星座の中に混じって一際明るく光る4大惑星を表示することで,子どもたちが星座を見誤ることを防いだり,これを目印として星座を見つけたりすることができる。

(3)表示する最低等級を調節できる

都市部では,町明りのために夜空も明るく,一般的な星座早見盤に表示されているように多くの星は見えない。一般的な星座早見盤では,実際の星空にくらべて表示される星が多すぎるためにうまく使えないということもおこる。そこで「とんがり星」では,観測地の夜空の明るさ(暗さ)の状況に合わせて最低表示等級を設定できるようにした。また,あえて1等星しか見えないような夕方薄暮の時間帯に夏の大三角を観察すれば,だれでも容易に大三角を認識できる。このような場合にも1等星以上だけを表示した星座早見笠を用意すればよい。

(4)その他細部にわたってカスタマイズが可能

星座線や夏の大三角などの季節線の有無,星座名や恒星名の有無,各部の線や文字の色や大きさなどを細かく指定することができる。これによって,指導者の意図に合わせた星座早見笠を作成できる。

4.授業での利用

○単元名

4年「空を見上げると(1)夜空を見よう」(全3時間)

○目標

○主な学習活動

(1時)
  1. 星空を見た経験について交流する
  2. 理科室のプラネタリウムで夏の大三角などについて観察する
  3. 星空について調べてみたいことを話し合う

プラネタリウムでの観察

プラネタリウムでの観察

(2時)
  1. 夏の大三角とそれを構成する1等星(ベガ,アルタイル,デネブ)について知る
  2. 「とんがり星」を組み立てて使い方を練習する
    • 方位磁針で星座早見笠と実際の方位を合わせて,観察したい方位(東)を向いて立つ
    • 星座早見笠で星が見える高度を調べ(10度毎の目盛を読む),げんこつ法(腕を真っ直ぐ伸ばして見た時の拳骨一つ分が約10度)で高度を計って星を見つける
  3. 家庭での観察の計画を立てる

頭の上にかざすようにして持つ

昼間の空で使い方を練習

(3時)
  1. 夏の大三角などを観察した様子について交流する
  2. 星の色や明るさについて気づいたことを話し合う
  3. 星座早見盤の使い方を練習し,夏休み中の観察の計画を立てる