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黒電話のベル

600-A型黒電話の内部

黒電話の中には大小2つのベルがあり、その間にハンマーがついています。ハンマーで2つのベルを交互に打つことで「ジリリリーン」という音を鳴らしています。

電話のアナログ回線は、相手からの着信時に交換機から周波数16Hzの交流信号が送られてきます。交流のため電磁石のN極とS極が入れ替わることで、ハンマーが往復運動をします。電圧は75Vと言われているようですが、20~30Vもあれば、ベルを鳴らすことができるようです。

黒電話を多数手に入れたときから、何とか呼び出しベルを鳴らす方法はないかと考えていましたが、なかなかよい方法がみつかりませんでした。75Vの電圧はともかく、16Hzという周波数を発生させる方法がわかりませんでした。リレー(電磁リレー)で電流を断続させようと考えたりもしましたが、周波数のコントロールができずあきらめていました。

ところが最近、デジタルICを使うと大変簡単に16Hzの信号を作ることができることを知りました。そこで、ネット上の情報などを参考に黒電話のベルを鳴らす実験をしてみました。

実験その1(シュミットトリガインバータとMOS-FET使用)

ブレッドボードで仮組

使用パーツ(この他にトランス)

デジタルICを使って16Hzの交流を発生させる方法は次のブログの記事を参考にしました。「SIN@SAPPOROWORKSの覚書」の「電話機の呼出音を鳴らしてみる(実験用16Hz信号発生装置の作成)

ブログ記事に倣ってシュミットトリガIC(HD74LS14)とFET(SKI03036)を使う方法を試してみました。シュミットトリガICを使うと抵抗とコンデンサをつなぐだけで16Hzの信号を発生させることができます。LEDを点滅させる程度ならその回路に直接つなぐだけですが、ベルを鳴らすにはトランスに大きな電流を流す必要があるので、スイッチングのためのトランジスタ(FET)をつなぎました。

最初は電源5Vに乾電池(1.5V×4=6V)が使えないかと考えましたが、電流不足でベルを鳴らすことはできませんでした。そこで電源にはACアダプタを使うことにしました。手近にあったものをいくつか試したところ2A程度は必要なようでした。

使用パーツ一覧(価格は秋月電子通商
シュミットトリガインバータHD74LS1430円
Nch MOS FETSKI0303650円
電解コンデンサ100μF10円
抵抗470Ω1円(100本100円)
電源トランス6,8,10,12:100V660円

電源を変えてなんとかベルを鳴らすことができましたが、音が小さいのと音色が「ジリリリーン」とは少々違っていました。そこで電話機の中を開けてベルが鳴る様子を観察してみると、ハンマーが小さい方のベルだけを打っていました。この回路がつくる16Hzの信号は、本当の交流ではなく0Vと+5V(実際には3~4V程度か)を繰り返す矩形波です。電磁石の極性が反転しないのでハンマーが両方のベルを往復しないのでした。実験前は、片側さえ打てば、戻る勢いで反対側も打つのではと期待していましたが、うまくいきませんでした。音が小さいのも片側のベルしか打たないためでした。

黒電話らしい音を鳴らすには、0と+の断続信号ではなく、+と-を繰り返す信号が必要でした。

実験その2(シュミットトリガインバータとモータドライバ使用)

電源トランスで昇圧

FETをモータドライバに交換

ユニバーサル基盤上の回路

アルミケース内

+の信号から-の信号を得るために電流を反転させる方法を探していたところ、モータドライバというICを使う方法に行き当たりました。これはラジコンなどでモータの正転、逆転を制御するために使用されるパーツです。これのIN1ピンに信号を送ると正転、IN2ピンに信号を送ると反転するといった動作をします。

モータドライバのIN1とIN2に交互に信号を送れば、+と-を交互に繰り返す電流を得ることができます。一方、先のインバータでゲートをもう一つつなぐと(実験1では内蔵された6回路の内2回路を使用)ゲートの前後でONとOFFが反対になった信号を得ることができます。この2つを組み合わせると+と-が交互に繰り返す信号を得ることができそうです。

モータードライバとしてTA7267BPを使ってみました。実験1のFETに代えてモータドライバをつないでみると、ハンマーが見事に往復運動をして両方のベルを打ちました。黒電話らしいベル音を十分な音量で響かせることができました。

実験がうまくいったので、ユニバーサル基盤に回路を組んで、アルミケースに収めました。プッシュボタンスイッチとLEDをつけて、ボタンを押している間ベルが鳴ってLEDが点滅するようにしてみました。

使用パーツ一覧(価格は秋月電子通商
シュミットトリガインバータHD74LS1430円
モータドライバTA7267BP150円(2個300円)
電解コンデンサ100μF10円
抵抗470Ω1円(100本100円)
電源トランス6,8,10,12:100V660円
LED抵抗内臓5V用20円(10本200円)
スイッチ押しボタン型70円

回路図(実験2)

実験その3(シュミットトリガインバータとモータドライバにタイマICを追加)

ユニバーサル基盤上の回路

使用部品(タイマIC 555を追加)

黒電話との接続

アルミケース内

電話のベルは、2秒鳴って1秒止まるを繰り返しているそうです。これが再現できれば、より黒電話らしくベルを鳴らすことができます。

このような動作をする回路を非安定マルチバイブレータというそうです。555というタイマICを使うとわずかな部品で簡単にこの回路を実現でき、2本の抵抗値と1本のコンデンサの容量を調整することでONとOFFの時間を任意に設定することができるということです。(実験1でインバータICを使った16Hzの発信回路もこの555で作ることもできるそうです。)ちなみにONとOFFの時間の割合を表す値をデューティー比というそうです。(デューティー比=ON時間÷周期)

そこで、タイマICを使って2秒ON1秒OFFの発信回路を作り、そこに実験2の回路をつないでみました。試してみると・・・・無事、黒電話のベルが2秒鳴って1秒止まるを繰り返し、実験は成功しました。

ON時間とOFF時間は、555につなぐ抵抗値R1,R2とコンデンサ容量C1から、次の式で計算できるということです。

ON時間=0.693×(R1+R2)×C1

OFF時間=0.693×R2×C1(おそらく0.693はlog2のことでしょう)

1(s)=0.693×R2(Ω)×0.001(F)

R2=1÷0.693÷0.000001

=1443001Ω=1.443MΩ≒1.5MΩ

実験3では、C1=1μFとしてR1,R2を計算し、R1=R2=1.5MΩとして回路を組みました。正確に計ったわけではありませんが、耳で聞いた感覚としては計算通りの結果を得ることができました。

使用パーツ一覧(価格は秋月電子通商
タイマICNE555P30円
シュミットトリガインバータHD74LS1430円
モータドライバTA7267BP150円(2個300円)
電解コンデンサ100μF10円
電解コンデンサ1μF10円
セラミックコンデンサ0.1μF10円(10個100円)
抵抗470Ω1円(100本100円)
抵抗100kΩ1円(100本100円)
抵抗1.5MΩ1円×2(100本100円)
電源トランス6,8,10,12:100V660円
LED抵抗内臓5V用20円(10本200円)
スイッチ押しボタン型70円
ターミナル陸式70円×2
DCジャック2.1mm70円
ユニバーサル基盤60円
合計1,264円

回路図(実験3)

Copyright(C)2016 Satoshi Ueno